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はじめに
今回は啓翁桜のお話です。
日本人は桜が大好きな民族と言われています。
確かに桜前線が北上してきたというニュースを聞くと「春がやってきた!」と心がウキウキする方は多いですよね。
でも、一口に桜と言ってもたくさんの種類があるのをご存知ですか?
もっと深く言うと桜の花は秋から晩春まで楽しめます。
その中で、今回、啓翁桜を取り上げたのはおそらく最も手軽に楽しめる桜だからです。
それでは、啓翁桜ってどんな桜?その魅力を掘り下げていきます。
啓翁桜とは
桜前線が通過する1週間から10日ほど前に道端や郊外の畑で派手に咲いている桜を見たことがありませんか?
その桜は啓翁桜かもしれません。
比較的花径は小さく、木にたくさんの花をつけます。
特徴
名前 啓翁桜
科属 モモ科サクラ属
学名 Cerasus ‘Keio-zakura’ Ohwi
原産地 日本
花色 薄ピンク
やや早咲きで花びらの先に大きな切れ込みがあるのが特徴です。
啓翁桜は全国各地に生産されておりシーズンになるといたるところで出回りますが、その中でも山形県が有名な産地です。
花言葉・誕生花
花言葉
貴方に微笑む・精神美・淡白・純潔・善良な教育
誕生花
分かりませんでした。無いようです。
由来・お話し
昭和に誕生した桜
啓翁桜は1930年に福岡県久留米市の吉永啓太郎氏によって作られた桜です。
啓翁桜の「啓」の字は啓太郎氏の名前からきています。
1930年と言えばもう昭和の時代ですから比較的歴史の浅い桜です。
そこで「九州で品種が作られた桜がなぜ山形で有名なの?」という素朴な疑問が生まれます。
それは
山形県が全国的にも導入が早かったこと。
生産方式が”株立ち法”と言われる独特の生産方式を導入し、量産に成功しているところ
東北以北の気候が年内早出し(12月に販売する)に向いているところ
という山形県の努力の結果だと思われます。
山形県の努力に拍手です。
ところで「啓翁桜」にはよく似た名前や花の桜があるのをご存じですか?
プロの花屋さんなら見かけたことがあるかも…。
「敬翁桜」「東海桜」「岳南桜」などなど。
「翁を敬う」という意味の「敬翁」っていう名前も良い名前ですね。
関西地方では「啓翁桜」というよりも「敬翁桜」の方がメジャーかもしれません。
これらの桜は葉の大きさが違う・萼片の長さが少し違う・品種改良された地域が違うというような違いがあります。
厳密にいうと学術的に違う桜です。
ですが一般の方はもちろん多くのプロの花屋さんでもその差に気づかないほどの差です。
一卵性双生児みたいなもので普通に花を楽しむには余り関係ないような気がします。
ドラマ「冬のサクラ」
2011年1月よりTBS「日曜劇場」で放送されました。
主演は草彅剛さん。今井美樹さん・佐藤健さん・加藤ローサさんなど豪華キャストでした。
第一話に啓翁桜のビニールハウスが写っていたのを記憶しています。
ドラマの内容もともかく「桜が主題に来るドラマなんてあるんだ」と感動を覚えたのを記憶しています。
さあドラマの結末は以下に!
桜前線より1週間前後早く咲く桜?
啓翁桜は桜前線の基準となるソメイヨシノに比べると若干早咲きです。
4月1日に桜前線が上陸するとおおよそ1週間前のお彼岸の頃に見頃を迎えます。
ただし、いつもこのパターンにあてはまるとは限りません。
筆者の経験では通常お彼岸のころに咲く啓翁桜がお雛祭りのころに開花したことを覚えています。
おそらくその年は1月が非常に寒くって2月が例年より暖かかったような…。
自然のものって難しいですよね。
お正月に飾られる訳
お正月に啓翁桜を飾り始めたのは東京のある料亭だったと聞いています。
迎春を祝うお年賀として、春に咲く桜を飾り初春を祝うという狙いがあったのではないでしょうか?
確かに春と言えば花見で桜の下で浮かれるという映像が頭をよぎりますよね。
見ごろ・名所
名所として確立されているところはあまり聞いたことがありません。
それは切花として栽培されている品種の為、あまりきれいな樹形で存在しているケースは少ないのではないでしょうか。
(枝を切って収穫するためです)
又、日本一の産地の山形県でも生産方式は「株立ち法」を採用している為、畑では根こそぎ収穫するはずです。
そのあたりも要因かなと感じます。
その中でもインターネット等で名所になりかけているような地域を紹介します。
奈良県五條市西吉野町から下市町の県道20号線界隈(下市町栃原区から西吉野町城戸区)の約10km区間
あまりに名所の数が少ないので少し詳しく解説します。
この辺りは果物の生産が盛んな地域ですが花木の生産も盛んな地域です。
その中で啓翁桜も生産され道端のいたるところに切花用として植栽されています。
特に川岸地区はシーズンになると啓翁桜のピンク・サンシュの黄色等のコントラストが見事で多くのカメラマンや観光バスで混雑します。
西吉野町川岸地区↑
注意点としてはこの近辺はすべて私有地ということ。観光用に整備されているわけではありません。
むしろ農産品として栽培していますので農地や敷地などへの無断侵入や枝を折って持ち出すという行為は確実にトラブルになります。
だから、必ず道路から眺めるだけにしておきましょう。
育て方
ガーデニングとしては向かない理由等
啓翁桜はよく育ちます。
日当たりと水はけが良い肥沃な土壌等条件がそろえばぐんぐん伸びます。
営利栽培目的で広い場所に植えるなら案外育ちやすい植物です。
よく情報として2m程度の樹高とありますがそれは間違いです。
もし仮に放置して育てると10m近くになり2階建ての家をしのぐほどの高さとなります。
横幅はソメイヨシノほど広くないですがそれは立派な木となります。
一般の桜よりも早咲きで多くの花をつけるため賑やかで華やかなのです。
しかし筆者がガーデニングに向かないという理由は「台風や突風などの強い風に弱い」というところです。
これは啓翁桜という気の特徴で「根が浅いこと」「気が裂けやすいこと」にあります。
台風等の影響で根から啓翁桜の木が倒れるという現象は毎年のように起こっています。
庭に植えていた樹の幹の太さも20~30㎝のそれなりに年数の経った啓翁桜が家に向かって倒れてきたり、道路をふさいだりした時のことを考えてください。
プロでもない限りはそんな木の処理は難しいのではないでしょうか?
啓翁桜は極力切り花として楽しまれることをお勧めします。
楽しみ方
生け花として楽しむ
年明けの生け花・華道の花材で桜といえば啓翁桜を使うケースが多いのではないでしょうか。
又、寒い冬に春を思わせる花として咲かせやすく扱いも簡単です。
和の雰囲気を醸し出すにもいい素材です。
飾ると周りが一気に明るくなりますよ。
盆栽として楽しむ
盆栽であれば根張りも調整でき飾る場所も移動できます。
庭植えより安全で毎年楽しめます。
プレゼントとして楽しむ
日本人が大好きな桜です。お花の好きな方に桜をプレゼントして嫌がられることはないでしょう。
花屋さんでも「桜の花束」となれば啓翁桜を使うことが多いです。
又、啓翁桜は水揚げが良い桜なのでプレゼントしてから咲かなくてガッカリというケースは少ないと思います。
年末にお歳暮として・年始のお年賀として・また慶事のプレゼントとして様々なシーンで活躍してくれます。
最後に
いかがでしたか?
一般の方に啓翁桜って聞きなれない名前ですが街のディスプレイや装飾等で案外身近で見かけていると思います。
今度街で桜を見かけたとき、ジッと眺めてください。
もしかしたら其の桜は「啓翁桜」かもしれません。